しましねまな日々

映画上映サークル「島の映画やさん」代表のブログ

活動記録

インタビューによる自己紹介:映画を軸にコミュニケーションの場をつくる 山口賀生さん 

投稿日:2022年4月18日 更新日:

代表・山口が、知り合いのライターさんに「自己紹介のためのインタビュー」をしていただきました。

山口の経歴や思いなどをお知りいただく自己紹介として、ご一読いただけると幸いです。

洲本オリオン外観

映画を軸にコミュニケーションの場をつくる 山口賀生さん

洲本オリオンの劇場内。

山口賀生さんは、淡路島出身の映画ファン。

ところが、淡路島では映画を見る機会が少ないことから、休館の映画館を使って上映会活動をスタート。

その後、大阪に拠点を移し、日替わり店長で営業している週間マガリで映画について話すバーをスタート、さらには友人と4人で『映画の話したすぎるラジオ』で見た映画についておしゃべりしたりと、映画をいとぐちにさまざまな活動を広げています。

このようなユニークな活動はどのようにして始まっていったのでしょうか。山口さんにお話を伺いました。

 —そもそもどうしてこのような活動を始めたんですか。

神戸新聞に取り上げていただいた記事

 映画は人並みに好きだったんですが、ちょうど30歳ぐらいの時に地元の淡路島に帰ることになって、仕事とは別で自分の人生の道しるべというか、これをやっていこうみたいなことをやりたいなと思いました

その中で、今の自分だったら映画かなと、島で一軒の映画館に企画の持ち込みができないかなと考えて、知り合いからその映画館の社長さんに話を繋いでもらって、一緒に上映会を企画しました。

そこからその映画館で映画を上映するようになりました。

上映会は合計で20回以上開催しました。

今は島を出てしまったので頻度は減っていますが、僕が映画上映会の企画の持ち込みを始めてから、その映画館が復活して、今は別の複数の団体さんが上映会を始めていたりします。

今はその映画館の広報のお手伝いなどもしています。

—上映する映画は自分が見たいものより、島の人が好きそうなものを選んでいるんですか。

ガールズ&パンツァーのイベント上映の様子

そうですね。上映会をやるのに当たって、自分の中で経済的な負担を自分で背負わないようにやりたいと思いました。

好きだから損してもいいとやっていたらどこかのタイミングで心が折れて続けられなくなるので。

もう一つが、映画館というのはある程度の人口がないと成り立たない商売なので、多くの人が見たいと思うような作品を扱おうと思いました。

活動を始めたのがちょうど『アナと雪の女王』が大ヒットした頃で、淡路島の人は映画館がないので見ていなかったんです。

映画館がないことで、都会との文化的な断絶みたいなものがあると思ったので、できたらメジャーな映画を扱おうと思いました。

もちろん、マイナーの映画をやるのもすごく有意義なことだと思いますが、マイナーな映画を見る人は元々映画が好きだから行くと思うんです。

そういう人は田舎だろうが都会だろうが自分のカルチャーにひっかかっていれば見に行くので、そうではなく、見たいけど映画館がないから見られないという人に向けてやりたいなと思いました。

 —その後、淡路島から大阪に引っ越されたんですよね。

アナと雪の女王上映時の看板作成の様子

 そうなんです。家族や仕事の関係で拠点を移しました。

頻度はめちゃくちゃ下がったものの、島での上映企画はたまにやっています。

 —今は天神橋筋商店街にある週間マガリという日替わり店主の店で、『映画の話したすぎるBAR』をやられているそうですが、それはどんなきっかけで始まりましたか。

映画バー開催時の様子

 元々淡路島で映画上映会活動をしていたのを、淡路島出身のライターさんが取材してくれたんですが、その方が週間マガリで映画のバー企画をやっていて、僕もやりたいなと思って。

今はその人と一緒にやっています。

 —どういう会なんですか。

 その日居合わせた人で映画の話をするということ以外は特にコンセプトはありません。

目標としては映画に詳しい人のためだけの場にしたくないので、詳しくない人と詳しい人が一緒に同席して、同じレイヤーで話をできる場にしたいと思っています。

フラッと来た「年に2本ぐらいしか見ないんです」みたいなお客さんと、「200本くらい見ます」みたいなお客さんでも話せる温度感の場にしたいなと思っています。

 —何か工夫をしたり、テーマを設定しているんですか?

 ジャンルをつけると狭く深くなりそうなので、オールジャンルにしています。

 —私はすごく見る映画が偏っていますが、もし私がお客さんならどんなふうに話をふりますか。

 最近何見ましたか?

 —『劇場版 呪術廻戦0』です。

 僕も見ています。漫画もご覧なっていますか。

 —最初の3巻ぐらいまではジャンプで読みました。

 なるほど。ある程度知っていて、話題になっているから見たって感じですか。

 —そうですね。

 話題になっている作品なので、そこからアニメの方に話を広げるとか、もしアニメに興味ないなら、話題作だからかな?と探りながら話せる話題を探します。

うまく広げられそうな話題が見つかったら、隣の方と話を繋げたりして、お客さん同士が同じレイヤーで会話できるように水を向けて接客することを心がけています。

 —山口さんが店頭に立ってドリンクを出しながらお話するようなスタイルですか。

週間マガリ内観

はい。何人かでやっていて、それぞれ得意な分野で話したりしながら、各々のやり方で接客しています。

別の温度感を持っているお客さん同士を、会話の温度感を均等にして違う温度の人たちをどうやって混ぜるか、みたいなことを考えています。

お客さん同士も自分たちで温度感を探ってもらうみたいな感じもあって。もちろんそこはある程度こっちがガイドラインを立てながらですけど、それで会話になるみたいな感じです。

 —映画バーと銘打っていますが、映画は入り口であって、来た人同士で何か楽しくその場をワイワイみたいなことを目指しているんですね。

 映画を媒介に話してもらう感じですが、あまり話題がそれすぎると映画目的のお客さんが疎外感を抱くので、映画の会話の範囲の中で楽しく会話できるように、ということは意識的にやっています。

お客さん同士、盛り上がったりしていたら我が意を得たりという気持ちになります。

 —何か面白い出会いや、面白いエピソードはありましたか。

週間マガリ内観

以前週間マガリ目当てで来られた2人組のお客さんがたまたま1人は文芸作品のジム・ジャームッシュが好きな人で、もう1人がゴリゴリのアクション映画至上主義者でした。

その2人が一緒に来て、映画の話をするのが目的できたわけじゃないですっていうところから会話が始まって、たまたま好きな映画を聞いたらそれが出てくるんですよね。

そんなふうに想定してなかったネタが出てくると楽しいなと思いますね。

—そんなに趣味が違うのに、どういうふうに会話するんでしょう。

 映画の議論の場ではなくて酒場としてやっているので、あまり議論で論破というようなスタイルではないですね。

ある種の妥協点みたいなのを探りつつ、トークというか、本当にもっと広い意味でのコミュニケーションを楽しんでもらうように心がけています。

 —接客もお好きなんですか。

スター・ウォーズ公開時の様子

 やってみたら楽しかったっていう感じですかね。

前職が旅館の接客でした。ある程度求められているものを返すのが接客の前提なんですが、求められているものの一歩先を行けたらいいなということは常々思っています。

お客さんに楽しんでもらうように、ある程度ネタ振りとかはするんですが、酒場ってコミュニケーションの場なので、お客さんにとっても自主性が求められる場でもあるとは思うんですよね。

お客さんにトークのきっかけを掴んでもらように頑張っています。ただ、どうしてもきっかけをつかんでいただけないときは、アイスブレイクをするなど工夫はしています。

 —もう一つ、ポッドキャストもやられているんですよね。

番組アートワーク

 1年半くらいやっています。最初は僕1人でしたが今は3人のメンバーと週に1回くらい、1時間くらい映画について話しています。

ポッドキャストを聞いてバーに来られたお客さんも何人かいました。

僕たちのファンというより、人が映画の話をしていたらそこに混ざりたくなることってあるんですよね。

だから、僕は自分の言いたいことを話すようにしています。

この人たちがこんなに喋っているなら、自分が混ざってもいけるかなって思ってもらいたいなって。

音声のメディアと実際のバーって結構相性がいいんですよ。映画館に入ったら2時間我慢しないといけないじゃないですか。

テレビならすぐ隣の人と話ができるけど、映画館はそれを2時間我慢しないといけない。

だから、映画って観ている間、共感したいところをがんばってこらえているようなところがあって、終わったあとの共感に対するバネみたいなのが大きい娯楽だと思うんですよ。

映画好きな人って出た瞬間に感想をツイッターに投稿することがよくあるんですけど、それは、他にもこの映画を見た人の話を聞きたいし、聞いてほしい気持ちがあるからだと思うんです。

映画を見ているときに発散できてないから、熱量が高いものに触れたい思いがあると思うんですよね。

それから、ポッドキャストは映画の話をするのに向いているところがあるんですよ。

隣で喋っているのをだらっと聞いているようなメディアなんじゃないかなあと。

そもそも僕たちは映画評論とかかしこまったことを話しているのではなくて、だらっとおしゃべりしているので、より親近感というか同じレイヤーでしゃべっていると感じてもらえると思います。

 —今後の目標などはあるんですか。

マラソン大会に参加した際の様子

 

それが今、わからなくなってきているんです。もし可能であればいつか本当にバーを持ちたいなと思いますね。

最終的には僕はコミュニケーションをしたいんです。

自分と全然違う人間でも、共通の話題があれば、その時間を共有できるので、その題材の一つとして映画があるのかなと思います。

映画という軸があることで、他の人とコミュニケーションができる。少なくとも映画バーに来てくれるお客さんは、ある程度映画の話ができるとわかっているので、何もないところから手探りで話すわけじゃない。それは自分でできる範疇のことだなって思うんです。

 —映画を媒介にみんなで楽しみたいんですね。

ロッキー・ホラー・ショーイベント上映参加時の様子

 そうですね。

映画好きって言っても僕はそこそこだし、深く追求するよりちょうど良い加減をどう作るかの方が自分には合っているのかもしれません。

—ちなみに一番好きな映画って何ですか。

『霧島、部活やめるってよ』(2012年、吉田大八監督)ですね。

映画好きな主人公が体育会系の人からいかに見下されているかみたいなことが描かれていて、学校の嫌さがいっぱい詰まっているような映画なんです。

でも同時に、体育会系の人たちも別に幸せと思ってそこにいるわけではないっていうことが描かれていて、結局自分の居場所は自分にしか作れないよねって話なんです。

自分と合わないと思っていた人たちにも事情があって、人生をよく生きるっていうのは、好きなことをやるしかないっていう話です。

無茶苦茶おすすめなんで、是非見てください。

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